2026/08/12
住んでから後悔しない家づくり
[C値]いくつなら高気密?気密測定士が「数字だけでは分からないこと」を解説
「C値がいくつなら高気密住宅ですか?」
高気密・高断熱住宅について調べていると
『C値』という言葉を目にすることがあると思います。
「C値0.5以下なら高気密」
「C値は小さければ小さいほどいい」
「C値0.2を切りました」
そんな数字を見て「結局、C値はいくつならいいの?」と思われている方も多いのではないでしょうか。先に結論をお伝えすると、C値は小さいほど住宅の隙間が少ないことを示します。しかし、C値だけで「良い家」かどうかを判断することはできません。
そして、私たちが気密測定をする一番の目的もC値の数字を競うことではありません。設計した住宅の気密性能が、実際の現場できちんとつくられているのか。それを確認するために測定しています。
今回は気密測定士として実際に住宅の気密測定に携わる立場から、C値についてお話しします。

C値とは?
C値とは、住宅にどの程度の隙間があるのかを示す指標です。一般に「相当隙間面積」と呼ばれ、単位は「㎠/㎡」で表されます。
例えば、同じ床面積の住宅を比較した場合
C値1.0よりC値0.5、C値0.5よりC値0.3の方が隙間が少ない住宅ということになります。
ただし、UA値との大きな違いがあります。
UA値は完成前でも[断熱材や窓などの仕様]をもとに計算できますが、C値は基本的に完成した住宅、または施工途中の住宅で実際に測定します。
つまり、「この仕様だからC値はこれくらいになるはず」ではなく、実際に建てた家がどうなっているのかを見る数字だと考えると分かりやすいと思います。
気密測定では何をしているの?
気密測定は専用の測定器を使います。
住宅の窓などに送風機を設置し[室内と屋外に圧力差]をつくります。
そのときにどれくらい空気が移動するのかを測定し、
建物全体にどの程度の隙間があるのかを調べます。
見た目では分からない住宅の隙間を実際に測って数値として確認する。
これが気密測定です。
私はここが非常に重要だと思っています。住宅性能には図面上で確認できる性能と、実際に建ててみなければ分からない性能があります。気密性能は、まさに後者です。

C値はいくつなら「高気密」なの?
ここはあえて明確にしておきたいところです。現在の国の省エネルギー基準には「C値○以下なら高気密住宅」という全国一律の基準はありません。
ということは
「C値0.5以下なら国が認める高気密住宅です」
という説明は正確ではありません。
一方でC値が小さくなれば、建物の意図しない隙間が少なくなっていることを意味します。
例えばC値が
1.0㎠/㎡
0.5㎠/㎡
0.3㎠/㎡
と小さくなれば、それだけ単位面積当たりの相当隙間面積が小さいということです。
ただ、私たちは「何が何でもC値0.1を目指しましょう」という考え方ではありません。なぜなら、住宅性能はC値だけでは決まらないからです。
C値が良ければ暖かい家になる?
↑これもよくある誤解です。C値が非常に小さい住宅だからといって、それだけで冬暖かく夏涼しい家になるわけではありません。
例えば、
- 断熱性能が十分でない。
- 窓の性能が住宅に合っていない。
- 夏の日射遮蔽ができていない。
- 換気が適切に機能していない。
- 冷暖房計画が合っていない。
こうした問題があれば、C値だけ良くても快適な住宅にはなりません。
前回の記事でもお話ししましたが、住宅性能は家全体で考える必要があります。
- 断熱
- 気密
- 窓
- 日射
- 換気
- 冷暖房
- 施工
これらがきちんと組み合わさって、初めて快適な住環境につながります。
なぜ気密性能が換気に関係するの?
「換気扇が付いているなら、気密は関係ないのでは?」と思われるかもしれません。
実は、気密と換気には深い関係があります。24時間換気は、どこから空気を入れて、どこから排出するのかを考えて計画します。
ところが、住宅に意図しない隙間がたくさんあれば計画していない場所からも空気が出入りします。そうなると、設計した通りに空気が動きにくくなる可能性があります。
高気密というのは、家を密閉して空気を入れ替えないことではありません。むしろ逆です。余計な隙間を減らして、必要な換気を、計画した場所で行う。
そのためにも気密性能は大切です。
C値を見ると「施工」が見えてくる
私がC値で特に大切だと思っているのはここです。気密性能は、設計だけではつくれません。現場の施工が非常に大きく影響します。
- 配管が壁を貫通するところ
- 電気配線が通るところ
- 窓の周辺
- 床と壁の取り合い
- 壁と天井の取り合い
こうした部分を一つひとつ丁寧に施工していく必要があります。
図面上では同じ住宅でも、施工によって気密性能に差が出る可能性があります。だからこそ、「高気密仕様です」と言うだけではなく、実際に測定する。これが大切だと考えています。
測定結果が悪かったらどうする?
ここが気密測定を行う大きな意味の一つです。もし想定していた数値が出なければ、「なぜだろう?」と現場を確認します。
- 配管や配線の貫通部
- サッシ周辺
- 気密層のつながり
- 床・壁・天井などの取り合い
施工途中であれば、こうした部分を確認して修正できる場合があります。
だから私たちは、気密測定を「成績発表」だとは考えていません。住宅の施工状態を確認するための検査の一つだと考えています。
中間測定と完成測定は何が違う?
気密測定には、施工途中で行う「中間測定」と、建物が完成した段階で行う「完成測定」があります。
中間測定のメリットは、問題が見つかった場合に手直ししやすいこと。壁や天井を仕上げる前であれば、気密層の状態を確認できる部分があります。
一方、完成測定は、実際に完成した住宅として最終的にどの程度の気密性能になったのかを確認できます。どちらにも意味があります。
重要なのは「測定すること」自体を目的にするのではなく、何を確認するために測定するのかを明確にすることだと思います。
C値の小ささを競うための家づくりにはしたくない
「C値0.3でした」
「0.2でした」
「0.1台が出ました」
住宅業界ではこのような数字が注目されることがあります。
もちろん良い結果が出れば、施工に携わった私たちもうれしいです。でも、お客様が家を建てる目的は、良いC値を出すことではありません。
- 冬暖かく暮らしたい
- 夏も快適に過ごしたい
- 家の中の温度差を少なくしたい
- 安心して長く暮らしたい
そのために住宅性能があります。
だから私たちは、C値だけを切り取って家の良し悪しを判断するのではなく、断熱・気密・換気・冷暖房・施工まで含めて、家全体を見ることを大切にしています。
よくあるご質問
Q. C値はいくつなら高気密住宅ですか?
現在の国の省エネルギー基準には「C値○以下を高気密住宅とする」という全国一律の基準はありません。C値は小さいほど隙間が少ないことを示しますが、数字だけで住宅全体の性能を判断しないことが重要です。
Q. C値とUA値は何が違うのですか?
UA値は主に建物からどれくらい熱が逃げやすいかを示す外皮性能の指標です。C値は住宅の隙間の程度を示す指標で、実際の建物を気密測定して確認します。まったく別の性能です。
Q. C値は設計段階で分かりますか?
正確なC値は実際の建物を測定しなければ分かりません。どのような気密施工をするかは設計できますが、最終的な性能は現場で確認する必要があります。
Q. 気密性が高いと息苦しくなりませんか?
高気密住宅は「換気しない住宅」ではありません。意図しない隙間を減らし、必要な空気は計画換気によって入れ替えます。
Q. 気密測定はした方がいいですか?
私たちは、設計した気密性能が現場できちんと施工されているかを確認するという意味で、実測には大きな意味があると考えています。
まとめ|C値は「自慢する数字」ではなく「確認する数字」
C値について一番お伝えしたいのは、数字だけを追いかけないでほしいということです。
C値は住宅の気密性能を確認する大切な指標です。でも、本当に大切なのは、「C値が0.何だったか」だけではありません。
- なぜその性能が必要なのか
- きちんと施工できているのか
- 換気は計画通り機能するのか
- 断熱性能とのバランスは取れているのか
そこまで考えて初めて、C値という数字に意味が生まれます。
ココチの家では、C値を良く見せるために気密測定をするのではなく、設計した性能が現場できちんとつくられているかを確認するために測る。そんな考え方で住宅性能と向き合っています。
次回は新築から少し視点を変えて、「中古住宅を買う前に何を調べる?建築士が見るチェックポイント」についてお話しします。
この記事を書いた人
原田 恵美|ココチの家
二級建築士/既存住宅状況調査技術者/気密測定士/インテリアコーディネーター
京都で住宅の設計・施工に携わり、高気密・高断熱住宅の家づくりだけでなく、既存住宅の状況調査や気密測定にも取り組んでいます。
数字そのものを目的にするのではなく、「ご家族が長く安心して暮らせる性能」を大切にしています。


