2026/08/05
京都の家づくり
京都で[高気密高断熱住宅]はどこまで必要?建築士が考える住宅性能
「京都で家を建てるなら、断熱性能はどこまで必要ですか?」
家づくりのご相談をしていると、こうしたご質問をいただくことがあります。
断熱等級6、断熱等級7、UA値、C値。
住宅性能について調べれば調べるほど、たくさんの数字が出てきて、「結局どこまでやればいいの?」と思われる方も多いのではないでしょうか。先に私たちの考えをお伝えすると、
住宅性能は、数字を競うことが目的ではありません。
大切なのは、京都の気候や土地条件、そのご家族の暮らし方に合わせて、冬暖かく、夏も快適で、家の中の温度差が少なく、長く安心して暮らせる家をつくること。
そのために必要な性能を考えることが、本来の高気密・高断熱住宅だと私たちは考えています。

そもそも「断熱等級」とは?
住宅の断熱性能を示す指標の一つに「断熱等性能等級」があります。
2022年に、それまでの最高等級4より上の等級として等級5・6・7(※)が新設されました。地域区分5~7の場合、UA値の基準は次のようになっています。
※断熱等級における「地域区分」とは、日本全国の気候条件に合わせて住宅の断熱基準を8つのゾーン(1〜8地域)に分けた国の基準です。関西は6、7地域に該当します。
- 断熱等級4:UA値0.87以下
- 断熱等級5:UA値0.60以下
- 断熱等級6:UA値0.46以下
- 断熱等級7:UA値0.26以下
UA値とは、住宅内部の熱が外へどれくらい逃げやすいかを表す指標です。基本的には数字が小さいほど、熱が逃げにくい住宅ということになります。
ただし、ここで注意していただきたいことがあります。UA値だけでは「暖かい家」かどうかは判断できません。

UA値が良ければ、暖かい家になる?
ここは私たちが家づくりでとても大切にしている部分です。例えば、計算上のUA値が非常に良い住宅だったとします。それでも、
- 隙間が多い
- 窓の計画が適切ではない
- 夏の日射遮蔽ができていない
- 換気計画がうまく機能していない
- 冷暖房計画が住宅に合っていない
- 断熱材が設計通り施工されていない
といったことがあれば、期待した住み心地にならない可能性があります。
つまり、断熱性能だけを高くすれば、高性能住宅になるわけではありません。家は、断熱・気密・窓・日射・換気・冷暖房・施工などを一つのシステムとして考える必要があります。
「高断熱」と「高気密」は別の性能です
ここもよく混同されるところです。
断熱性能を表す代表的な数字が「UA値」。
一方、住宅の隙間の程度を示す数字が「C値」です。
C値は設計図から計算するものではありません。
実際に完成した建物で気密測定を行って確認します。
ここは非常に重要だと考えています。
設計上「高気密住宅です」と言うだけではなく、実際に建てた家がどの程度の気密性能になっているのかを測る。住宅性能は、計算するだけではなく、現場で確認することも大切だからです。C値については、次回の記事で詳しくお話しします。

なぜ京都で住宅性能をしっかり考えたいのか
京都の気候を数字で見てみましょう。
気象庁の1991〜2020年の平年値を見ると、京都では1月下旬の平均気温が約4.5℃、日最低気温の平年値は約1.1℃です。一方、8月1日の平年値では平均気温29.0℃、最高気温34.2℃、最低気温25.1℃となっています。
つまり京都の家づくりでは、冬の寒さだけではなく、夏の暑さも同時に考えなければなりません。だからこそ、単純に断熱材を厚くするだけでは不十分です。
冬はできるだけ熱を逃がさない。一方、夏は強い日射をできるだけ家の中へ入れない。窓の位置や大きさ、庇、外付けの日射遮蔽なども含めて設計する必要があります。
私たちが「京都の風土と暮らす」と考えている理由の一つも、ここにあります。

京都なら断熱等級6?それとも7?
ここも気になるところだと思います。
私たちは「等級が高ければ高いほど、必ず良い家になる」とは考えていません。
もちろん断熱性能を高めることにはメリットがあります。一方で、性能を高めるほど建築コストも上がります。だから大切なのは、
その性能にかける費用が、実際の暮らしにどれだけ意味を持つのか。という視点です。
断熱等級7にするために予算を大きく使う一方で、窓や換気、日射遮蔽、施工品質などがおろそかになってしまったら本末転倒です。逆に、断熱性能・気密性能・窓・換気・冷暖房計画をバランスよく整えることで暮らしやすい住宅をつくることができます。
数字ではなく「家全体」で性能を見る。
これが私たちの考え方です。
高性能住宅で一番大切なのは「施工」
そして、もう一つ忘れてはいけないのが施工です。
どれだけ性能の高い断熱材を選んでも、施工が適切でなければ本来の性能は発揮できません。
- 断熱材の隙間
- 配管や配線の貫通部
- 床・壁・天井の取り合い
- 気流止め
こうした一つひとつの施工が、実際の住宅性能に関わってきます。
だから私たちは、図面上の性能だけではなく、「現場でその性能がつくられているか」を見ることを大切にしています。気密測定を行うのもそのためです。

性能は「自慢する数字」ではなく「家族を守るもの」
住宅業界では「UA値〇〇」「C値〇〇」といった数字が注目されることがあります。
もちろん、数字は住宅性能を客観的に確認するために必要です。
でも、私たちにとって数字は目的ではありません。
- 冬の朝、布団から出るのがつらくない。
- お風呂へ行くとき、廊下が極端に寒くない。
- 夏に2階へ上がった瞬間、ものすごく暑いという状態になりにくい。
- 家のどこにいても、極端な温度差を感じにくい。
そうした毎日の暮らしをつくるために、住宅性能があります。
だからこそ、「高性能住宅を建てること」ではなく、「家族が長く安心して暮らせる家をつくること」。そのために必要な性能を考える。これが、ココチの家が考える高気密・高断熱住宅です。
よくあるご質問
Q. 京都なら断熱等級7まで必要ですか?
一概には言えません。
建築地、建物形状、窓、日射条件、冷暖房計画、予算などによって適切な性能は変わります。「等級7にすること」を目的にするのではなく、住宅全体のバランスを考えることが大切です。
Q. UA値が良ければC値は気にしなくてもいいですか?
UA値とC値は別の指標です。
UA値は主に外皮から熱がどれだけ逃げやすいかを計算した値ですが、C値は実際の建物の隙間を測定した値です。そのため、両方を別々に確認する必要があります。
Q. 高断熱住宅は夏も涼しいですか?
断熱性能は夏にも重要ですが、それだけでは十分ではありません。
特に夏は、窓から入る日射をどう遮るかが重要になります。断熱・日射遮蔽・換気・冷房計画を合わせて考える必要があります。
Q. 高気密高断熱住宅ならエアコンは不要ですか?
基本的に冷暖房設備は必要です。
高気密高断熱住宅は「暖房や冷房が不要な家」というより、少ないエネルギーで室温を維持しやすい家と考えた方が分かりやすいでしょう。
まとめ|京都の家づくりは「性能の数字」だけを見ない
京都で高気密高断熱住宅を考えるなら断熱性能だけを見るのではなく、
断熱・気密・窓・日射・換気・冷暖房・施工。
これらを一つの家として考えることが大切です。
そして何より、その性能が、そこで暮らすご家族にとって本当に必要なのか。そこから考えることが大切だと私たちは思っています。
ココチの家では、京都の気候や土地条件を踏まえながら、性能と暮らしの両方から住まいをご提案しています。「自分たちにはどこまでの性能が必要なんだろう?」そんな段階からでも、ぜひご相談ください。

この記事を書いた人
原田 恵美|ココチの家
二級建築士/既存住宅状況調査技術者/気密測定士/インテリアコーディネーター
京都で住宅の設計・施工に携わり、高気密・高断熱住宅の家づくりだけでなく、既存住宅の状況調査や気密測定にも取り組んでいます。数字だけを追うのではなく、「家族が長く安心して暮らせる性能」を大切にしています。

