2026/08/19
「高気密住宅なのに換気できていない?」換気と気密の本当の関係を建築士が解説
気密が良すぎると空気が入れ替わらない?
「高気密住宅って、空気がこもらないんですか?」
「家の隙間を少なくしたら、換気ができなくなるんじゃないですか?」
高気密・高断熱住宅のお話をしていると、こうしたご質問をいただくことがあります。確かに「高気密=隙間が少ない家」と聞くと、空気が入れ替わらないようなイメージを持たれるかもしれません。

でも住宅の換気は本来、隙間から自然に空気が出入りすることを期待するものではありません。必要な場所から空気を取り入れ、住宅の中を通り、必要な場所から排出する。その空気の流れを考えて、換気計画を行います。
そして、その計画した換気をきちんと機能させるために重要になるのが、住宅の気密性能です。さらに私たちは、もう一つ大切なことがあると考えています。
それは、換気設備を設置して終わりではなく、計画した風量が実際に出ているのかを確認すること。今回は、住宅の気密と換気がどう関係しているのか、そして私たちがなぜ「風量測定」を大切にしているのかについてお話しします。

そもそも24時間換気とは?
現在の住宅では、原則として機械換気設備の設置が必要です。
住宅の場合、建築基準法のシックハウス対策として、原則「0.5回/h以上」の換気能力を持つ機械換気設備が求められています。
0.5回/hというのは、簡単にいうと、
[1時間で住宅内部の空気量の半分程度を入れ替える能力]
という考え方です。
そのため、現在の住宅にはいわゆる「24時間換気システム」が設置されています。ただ、ここで大切なのは、「換気設備が付いている」ことと、「計画した通りに空気が動いている」ことは同じではないということです。
換気は「換気扇を付けること」ではありません
住宅の換気を考えるとき、換気扇だけを見ていてはいけません。大切なのは空気をどこから入れて、どこを通って、どこから出すのか。ということです。
例えば、外から新鮮な空気を取り入れる。
その空気がリビングや寝室などに入り、住宅の中を移動する。
そして最終的に、排気する場所から外へ出ていく。
この一連の空気の流れを考えるのが換気計画です。
「24時間換気が付いているから大丈夫」
「換気扇が回っているから大丈夫」
とは、単純には言えません。
住宅全体として必要な場所に必要な空気が届いているのか。そこまで考える必要があります。
そこで重要になるのが「気密」です
ここで、前回の記事でお話ししたC値、つまり住宅の気密性能が関係してきます。
例えば
「ここから空気を入れて、このルートを通して、ここから排出する」
という換気計画をしたとします。
ところが住宅に意図しない隙間がたくさんあったら、どうなるでしょうか。
計画した給気口以外のところから空気が入ったり、意図していないところから空気が出入りしたりする可能性があります。
そうすると、設計時に考えていた空気の流れになりにくくなります。
つまり、気密性能は、暖房した空気や冷房した空気を逃がしにくくするためだけのものではありません。計画した換気を機能させやすくするためにも重要な性能です。
「高気密」と「換気」は反対ではありません
「高気密にすると空気が入らない」というイメージを持たれる方もいらっしゃいます。しかし、住宅の換気で大切なのは、どこから入ってくるか分からない空気に頼らないことです。
・意図しない隙間をできるだけ減らす。
・そして、必要な空気は計画した給気口から取り入れる。
・住宅の中を通して、計画した場所から排出する。
つまり、気密と換気は別々のものではなく、セットで考える必要があります。「高気密だから換気が必要」ということではありません。換気を計画通りに機能させるためにも、気密性能が重要。この順番で考えると分かりやすいと思います。
でも計画しただけでは分からないこともある
ここからが、私たちがとても大切にしているところです。
・換気計画をして
・換気設備を選んで
・ダクトを施工して
・給気口や排気口を取り付ける。
これで換気設備は完成します。
では、施工後に本当に設計した通りの風量が出ているのでしょうか?
これは、図面を見ているだけでは分かりません。
換気設備が動いていることは確認できます。でも、どれだけの量の空気が動いているのか?ここまでは感覚だけで判断できません。
換気扇が回っている=計画通りではない
例えば、ある場所で設計上50㎥/hの風量が必要だったとします。実際に換気扇も回っていて、排気口から空気も出ています。でも測ってみたら、30㎥/hしか出ていなかった。(※この数字は仕組みを説明するための一例です。)
この場合「換気設備は動いている」という意味では問題がないですが、設計した風量が確保されているか?という点では確認が必要になります。
だから私たちは「換気扇が回っているか」だけではなく、「どれだけの風量が出ているのか」を見ることが大切だと考えています。
なぜ設計通りの風量にならないことがあるの?
特にダクトを使う換気システムでは、空気が通る経路ができます。
・ダクトの長さ
・曲がり
・分岐
・ダクト径
・給気口や排気口
・フィルター
・換気設備本体
こうした様々な条件が空気の流れに関係します。
空気にも流れにくさがあります。ダクトが長くなったり、曲がりや分岐が増えたりすると、圧力損失が生じます。ですから、換気設備のカタログに書いてある数字だけを見て「この家はこれだけ換気できています」と判断するのではなく、実際に住宅へ設置した状態で確認することが大切です。
だから私たちは「風量測定」をします
そこで行うのが、風量測定です。
風量測定では、給気口や排気口などで、実際にどれくらいの空気が動いているのかを測ります。そして、計画した風量と、実際に測定した風量を比較する。
これによって初めて「換気設備を設置した」から一歩進んで「計画した換気が実際の住宅で機能しているか」を確認することができます。

「換気測定」ではなく「風量測定」
私たちが測っているのは、風量です。「換気測定」というより、風量測定と呼ぶ方が正確です。どれくらいの空気が流れているのかを数値として確認しています。
住宅の換気性能を考える上で、この実測はとても大切だと私たちは考えています。
気密測定と風量測定は何が違う?
前回の記事では「気密測定」についてお話ししました。
気密測定と風量測定は、測っているものが違います。
気密測定は、住宅にどの程度の隙間があるのかを確認するもの。
そして、
風量測定は、換気設備によって実際にどの程度の空気が動いているのかを確認するもの。
気密測定では「家の隙間」を見る。
風量測定では「空気の量」を見る。
住宅性能という意味ではつながっていますが、この二つは別の測定です。
C値が良ければ、換気も大丈夫?
これも、そうとは限りません。
例えば非常に気密性能の高い住宅でも、換気設備の選定や設計、施工などに問題があれば、必要な風量が確保できない可能性があります。
逆に、高性能な換気設備を採用したとしても、住宅に意図しない隙間が多ければ、計画した通りの空気の流れになりにくくなる可能性があります。
つまり、C値だけを見ても、換気設備だけを見ても、住宅全体の空気の状態は判断できません。
だから私たちは気密 / 換気 / そして実際の風量、これらを別々ではなく住宅全体として考えています。
住み始めてからも換気性能は変わります
もう一つ知っておいていただきたいのが、メンテナンスです。
例えば、給気口や換気設備にはフィルターがあります。
そこにホコリや汚れが溜まれば、空気が通りにくくなる可能性があります。新築時にはきちんと風量が出ていたとしても、何年もフィルターを掃除していなければ、同じ状態が続くとは限りません。
そのため、換気設備は付けて終わりではなく、住み始めてからの維持管理も必要です。清掃やフィルター交換の方法・頻度は、採用している換気設備の取扱説明書に従って確認してください。
住宅性能は「計算→施工→測定→確認」
前回のC値の記事でもお話ししましたが、私たちは住宅性能を「カタログの数字」だけでは判断しません。
断熱性能なら、計算する。そして、設計した通りに施工する。気密性能なら、実際に気密測定をする。換気なら、計画する。そして、実際に風量を測る。
つまり、
計算する
施工する
測る
確認する
この流れが大切だと考えています。
よくあるご質問
Q. 24時間換気は止めてもいいですか?
24時間換気は、原則として常時運転することを前提として設けられている設備です。日常の使用方法やメンテナンス時の取り扱いについては、採用されている換気設備の取扱説明書をご確認ください。
Q. 高気密住宅は息苦しくなりませんか?
高気密住宅は「空気を入れ替えない住宅」ではありません。意図しない隙間を減らし、必要な換気は換気設備によって計画的に行います。
Q. C値が良ければ換気性能も良いということですか?
同じではありません。
C値は住宅の気密性能を示す指標です。換気設備による実際の風量を示す数字ではありません。そのため、気密性能と換気性能はそれぞれ確認する必要があります。
Q. 風量測定では何が分かりますか?
給気口や排気口などで、実際にどの程度の空気が流れているのかを確認できます。計画した風量と実測した風量を比較することで、換気設備が実際の住宅でどのように機能しているのかを確認する材料になります。
Q. 換気設備はメンテナンスが必要ですか?
必要です。特にフィルターの汚れなどは空気の流れに影響する可能性があります。清掃・交換方法や頻度については、使用している換気設備の取扱説明書に従ってください。
まとめ|「換気設備がある」から「実際に空気が動いている」へ
今回、一番お伝えしたかったのは
気密と換気を別々に考えないということです。
住宅の換気では、どこから空気を入れるのか。どこを通すのか。どこから出すのか。を計画します。そして、その計画した空気の流れをつくりやすくするために、気密性能が重要になります。
さらに、換気設備を付けて終わりではありません。
計画した風量が、実際に出ているのか。
そこまで確認する。私たちは、それが大切だと考えています。
住宅性能には、
・UA値
・C値
・換気回数
・風量
さまざまな数字があります。
でも、その数字を良くすることが家づくりの目的ではありません。
冬暖かく夏も快適に、必要な空気がきちんと入れ替わり。ご家族が長く安心して暮らせる。その暮らしを実現するために、住宅性能があります。
だからココチの家では、
「設計したから大丈夫」ではなく、実際の住宅で確認する。
気密は、気密測定で。
換気は、風量測定で。
目に見えない住宅性能だからこそ、数字で確認することを大切にしています。
この記事を書いた人
原田 恵美|ココチの家
二級建築士/既存住宅状況調査技術者/気密測定士/インテリアコーディネーター
京都で住宅の設計・施工に携わり、高気密・高断熱住宅の家づくりだけでなく、気密測定や風量測定など、完成した住宅の性能確認にも取り組んでいます。
性能の数字を競うことではなく、「設計した性能が実際の住まいで発揮されているか」を確認し、ご家族が長く安心して暮らせる住まいをつくることを大切にしています。


